諒(2)

1/1
前へ
/18ページ
次へ

諒(2)

 美春がこの世を去った翌年、地元の大学に進学し、受験資格を得てパイロットを目指して東都航大を受験した。  美春がいる空の近くにいたいと思ったのだ。  国の最高峰である東都大に次ぐ難しさの東都航大に、まさか一発合格できるとは思ってもいなかった。  練習のつもりだったので合格発表を見たときは夢でも見ているのかと思った。  幽霊たちに振り回されて体力もなく、勉強も中の下だった俺が、航空大学を受験すると言い出したとき、誰もが夢物語をと笑った。  そんな中、最後の担任だった市原だけが心の底から応援してくれた。  卒業後もちょくちょく連絡をくれて、合格を伝えた時は涙を流して喜んでくれた。  東都航大は全員寮生活をすることになっているから、実家は売りに出すことになった。  一人には広すぎると母さんが言い出したのだが、もう戻れないと思うと寂しさが込み上げてくる。  母さんはペット禁止の小さなアパートに移り住むことになったから、ミハルと暮らせなくなった。  卒業さえすればまた一緒に暮らせるので、その間だけ美春のばあちゃんに預かってもらうことになっていたのだが、ミハルが何故かおびえて落ち着かない。  預け先が決まらず困っていたら、市原がミハルを預かると言ってくれて助かった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加