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諒(3)
航空大学の同級生はめちゃくちゃ優秀な人ばかりで、俺はついていくのがやっとだった。
その頭のいい人たちが年末年始やお盆も帰省せずに勉強に励む中、毎年夏だけは美春に会いたくて帰省していた。
帰省といっても母の住むアパートではミハルと過ごせないから美春に会えない。
ホテルでも借りようかと思ったが、まだ稼ぎのない学生の身だから贅沢はできないし、ペットも泊まれるホテルなんて見当たらなかった。
ばあちゃんちだったら泊めてくれるとわかっていたが、ミハルが嫌がるので悩ましい。
そんな話を市原にしたら、夏は実家で暮らす予定だからと部屋を提供してくれることになった。
それから卒業までの三年、夏の初めは市原に俺の知らない美春のことを教えてもらう時間になった。
きっとミハルの名前を知って、俺が美春を好きだったことに気づいたのだろう。
市原が美春の担任だったのは高一のころだ。
ずっと別々のクラスだった俺は、知らない美春を知ることができて幸せだった。
死んだ人を思い続けるのは間違えているとか踏み込んでこない市原は、尊敬できる教師だと思っている。
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