美春(3)

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美春(3)

 諒ちゃんはパイロットの勉強に忙しそうだけど、去年も今年も美春に会いに来てくれていた。  お盆に入ると一番早い飛行機で帰ってきてくれる諒ちゃんだけど、日が変わると同時に到着している私としてはちょっと待ち時間が長く感じる。  ミハルの中で待っていると必然的に先生とも一緒にいることになる。  先生は私の知らない諒ちゃんについて教えてくれるので、私はその時間が好きだった。  私のことも全部諒ちゃんに話してしまうのでちょっと照れるけど、生徒のことをよく見ている素敵な先生だったんだなって改めて思う。  ほんとは少し猫が苦手なのに、諒ちゃんのために猫を預かってくれたのも知っている。  私はそんな優しい先生のために、毎年ミハルに先生に近づきすぎないようにとお願いしている。  命を失ってから空にあがるまでの少しの間、私はミハルの体を借りていた。  そのおかげで私は、他の里帰りツアーの人たちとは違って、諒ちゃんと触れ合うことができる。    毎年たった一週間弱しかないし、諒ちゃんと話すこともできないが、私にとってそれはとても大切な時間だった。  諒ちゃんが頭をなぜてくれる、それだけで十分なのだ。
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