美春(4)

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美春(4)

 諒ちゃんが空を飛ぶようになった八年目、私はある報告をするために諒ちゃんを待っていた。  ミハルの体ではにゃーにゃー鳴くことしかできないけれどきっと伝わると信じたい。  空の偉い人に大事な話があると呼び出されたので、今年は朝一番に来ることができなかった。  おかげで諒ちゃんの寝顔を見るどころか、行ってらっしゃいもできていない。  もう美春として会えるのは最後なのだ。  これから生まれ変わる準備に入るから、もうここには会いに来れない。  歴代最速で生まれ変われることが決まった私は、それを伝えたくて諒ちゃんを待っている。  諒ちゃん、私、めちゃくちゃ頑張ったんだよ。  一緒に死んだ作業員さんたちの魂を助けた功績で、特別に記憶を持って生まれ変われることは早くに決まったけれど、生まれ変わるタイミングがここまで早くなったのは私の努力だ。  まだニ年も順番待ちみたいなのに、もう空から降りちゃいけないなんて酷いなと思ったけど、これでも十分特別扱いなのだというからしょうがない。  私は早く伝えたくて、諒ちゃんを迎えに行こうと外に出た。
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