諒(5)

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諒(5)

 今日から世間は盆休み、もちろん俺は今年も仕事だ。  こうやって休みたいときに休めないと、ついパイロットなんてなるもんじゃなかったと思ってしまうが、空は考えていた以上に好きなので間違えてなかったと思っている。  空に上がっている間だけは、美春がいない寂しさも、戻ってこないかもという不安も溶けてなくなるような気がする。  今朝はミハルがいつも通りで不安になった。  お盆だというのに、美春は来ていないのか?  来る途中で何かあったのではと不安になった。  もしかして、とうとう生まれ変わったのかもと期待に胸躍らせそうになるが、ぬか喜びはしたくない。  人の命を預かる仕事だから、気合を入れて美春を頭の外に追いやったが、帰り道はまた落ち着かない気持ちでいっぱいになった。  そんな中、突然激しいクラクションが聞こえてきて、大きなトラックが道路に倒れこむ女性をひこうとしているのが目に飛び込んできた。  助けてあげたいが間に合うような距離じゃない。  俺はただ立ちすくむことしかできなかった。  凄惨な光景は見たくなくて目をつぶったが、大きな音は聞こえてこない。
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