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「え!?いいのですか!?」
驚いて一旦断わるのを忘れてしまった。
だが女神は少し驚きながらも笑顔で、
「ああ。今日は予定がないからな」
そう言って手を差し出した。
せっかく少しでも共に居られるのなら、この機会を逃す手はない。背負っていた鞄の中から畳まれていた袋を取り出し、その中に少し荷物を分けて入れる。
「本当にいいのですか?重くはないですか?」
と渡すと
「こんなので重い等と言っていたら、旅など出来ないぞ」
と笑っている。
「?あなたも旅人なのですか?」
なんという偶然か
「ああ。旅の途中で今日は市場の近くの宿に泊まるんだ。明日出発するまで特に予定はない。暇をもて余していたところだ」
これは…チャンスなのだろうか
知り合って間もない男が気持ち悪いだろうか
けれども僅かでも可能性があるのなら
「あ、あの!」
少し意気込み過ぎた。
「もしも…もしもあなたのお邪魔にならなければ…その…一緒に旅に同行させてはいただけないでしょうか?」
しまった!
言ってしまってから思った。
何故こんな神々しい方にパートナーが居ることを考えなかったのだろう?
居ないわけがない。
気味悪がらせただけではなく、断る為の方法を考えさせるという重荷まで背負わせてしまった。
「すみません!その、考えなしに言ってしまいました!今のは気にしないで下さい!その…この街から……いえ、教会からほとんど出たこともなかったので、少し不安になってしまったのかもしれません」
言いながら、それは本当の気持ちかもしれない等と考えていると、
「聞いてみよう」
以外な言葉が聞こえたきた。
「……え?」
よく理解出来ず返すと、
「知らない事を始めるのも、知らない土地へ行くのも不安なのは当然だ。とりあえず旅というものに慣れるまで、とでも言えば、あいつらも受け入れてくれるだろう」
信じられない。
この方と共に旅が出来るのか?
「本当ですか?その…お仲間が何人かいらっしゃるのですか?では、初めて会った何も知らない男を仲間にというのは、なかなか難しいのでは…?」
相当な人格者あるいは、ぶっ飛んだ考えの持ち主の集まりでなければ難しいだろう。
旅というのは、それだけで色々なリスクがあるはずだ。そこに知らない者を突然仲間にするなど、簡単なことではないはずだ。
「何も知らなくはないぞ?お前は優しい奴だ。私や私の仲間達の心配も出来る奴だしな。私の仲間には、未だに何を考えてるのかさっぱりわからない奴等もいる。だが、散々迷惑もかけられるが、それも案外悪くない」
そう言って本当に楽しそうに笑っている女神にはずっと後光が差している。
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