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「あ!」
女神が急に何かを思い出したように言った。
「そう考えると、お前を仲間にするのは大して問題ないだろうが、お前があいつらと一緒にやっていけるかどうかが問題だな」
う~ん…と考える姿は、なんだか可愛いらしい。
今まだ登っている途中のこの坂で出会ったばかりだというのに、感情のままに、嘘偽りなく、色んな表情を見せてくれる。
「いえ、きっと大丈夫だと思います。職業柄たいていの方とは上手く付き合っていけると思いますので」
貴女がいるので。という心の声は閉まっておいた。
「職業?教会の人間と言っていたな?」
「ええ。先程まで教会で神に仕えていました」
と本音で答えてしまうと、
「ふっ。変な言い草だな。神を信じてる奴は、何処へ行こうがいつも傍に神が居ると言うぞ?お前は教会を出たら神に仕えるのを辞めたのか?」
可笑しそうに笑いながら話す。それが、罪深い等と微塵も思わせない、まるでそれでいいのだと赦しを与えられたようだった。
予想外の反応に、上手く頭が回らない。
「…ええ…。自分にとっての神を見付けたんです。これからは…それを大切に思っていきたいと思います」
そう、頭の悪そうな返答をしてしまった。
あなたという神に出会えたからと言わなかっただけよくやったと褒めるべきだろうか。
すると、
「ああ。それはいいな。自分が本当に大切に思える物を見付けられたのなら、大切にするべきだ」
一瞬頭が真っ白になった。
上手く回らない頭で考え思わず出てしまった言葉は、何故だかすんなり肯定された。
神の元を離れ、他の大切な物を見付けた。それは、口に出すべき事ではないし、口にしたら侮蔑的なあるいは同情的な目で見られるはずだった。
だが、それはなんの障害もなく素直に受け入れられた。
……いいのか?
こんな自分がこんな考えを持っても赦されるというのか?
女神は何を気にするでもなく、後光に包まれながら楽しそうに歩いている。
カラカラカラカラ…
急に強い風が吹き一瞬目を瞑る。
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