20人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
4. 花の都
――負けた。
先月のお茶会でアイリスが帰った時に、真っ先にこの言葉が頭に浮かんできた。
別に勝負をしようと思ってアイリスと会った訳じゃないし負けたも何も無いのだけれど、なぜだか無性に悔しくなる。完全にアイリスのペースに呑まれてしまった。
アイリスはセリオンの言っていた通り、思わず見た瞬間にフローラが「美しい」なんて言ってしまうほどの美女神だった。
なのに、なのにだ。中身がそれに伴っていない。というか、抜けている。
これまでリアナにしか見抜くことの出来なかった、フローラが出すはちみつの美味しさの秘密を、アイリスはあっさりと解いた。かと思えば、おかしな神鳥を出してきたり、迷子になっただのと、ほんとうによく分からない。
よく分からないと言えば、風の神殿にも住んでいないと言うし、住んでいる場所も秘密。そもそも何で結婚しているのかも、存在自体が秘密にされていたのも謎だ。
謎が多すぎるし、アイリスの存在そのものも謎の生物に対峙しているような気分になるしで、完全にやられっぱなしになっている。
今日こそは!! と言う気分でフローラは今、待ち合わせをしているアイリスの到着を待っている次第だ。
アイリスがきちんと約束の場所までたどり着けるのか、フローラが不安になってきたところで声をかけられた。
最初のコメントを投稿しよう!