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「さあ、座って食べましょう! アイリスはベジタリアンなのよね?」
「はい。でも皆さんは気にせず食べてください」
「1日くらい肉や魚を食べなくたって死にはしないわ」
メニューを見て適当にどんどん注文している間に、別の給仕係が先に頼んでおいたドリンクを持ってきてくれた。
花の都名物、すみれビールだ。香り付けにすみれの花を使用したホワイトビールで、口に含むと甘い香りがして女性に特に人気がある。
乾杯をした後でヴィーナスがどこのお店が気に入ったのかをアイリスに聞いてきた。
「最初に入ったエンブロイダリーレースのお店が凄く素敵でした。特に花模様の刺繍が立体感があって、刺繍糸の変化が美しくて……」
「スピローズのお店ですよね?あそこのレース生地は本当に見ていてうっとりしますよね。私は以前、ドレスを作って貰った事がありますよ。また注文しちゃおうかなぁ」
「私、あそこのお店でお針子として雇って貰えないかしら」
「「「ぶっ!!!!」」」
3人が3人とも、飲んでいたビールを思わず吹き出してしまった。
「あ、アイリス、あなた何言っているのよ?!」
「私、刺繍は多少出来るので働けないかと思って。お針子ならあんまり人と合わなくて済みそうですし」
「どこに天使の下で働く神がいるって言うのよ!」
天使は神の僕だ。自分の店を持っている神はいるが、天使が営む店で働くなんて根本的に間違っている。
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