2. ヒマ

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2. ヒマ

 ヒマだ。何もする事がない。  アイリスは刺繍を施していたレースをポイと放り投げ、テーブルにぐでーんと突っ伏す。  世間に存在が知られてから9年。もうすぐ10年経とうと言うのに、相変わらずの隠居生活を続けている。と言うのも色々理由はある。  まず第一に、風の神殿に住めなかったのだ。  風の神殿には多くの使用人や来訪者がいるので、アイリスの神気に当てられてしまう事を危惧したのと、このまま誰にも知られていない場所にいた方が安全だという事になった。  この話をセフィロスから聞かされた時にはショック過ぎて、3ヶ月は立ち直れなかった。せっかく一緒に住めると思っていたのに!  第2にこれまでよりもずっと、最上級神のみんなが来てくれる回数が減ってしまったという事。ここで暮らす事になった事情は知られているけれど、基本的にセフィロスに任せる、と言うスタンスなので、遊びに来てくれる頻度がぐんと減ってしまった。  そして最大の問題は、アイリスには友達がいないと言う事だ。まともに他の神と話したのは立神の儀の時と、セフィロスに花の都へ連れていってもらった時に海の神・ネプチューンと会った時くらい。友達と呼べるような親しい仲の神がいない。  お茶会やパーティーのお誘いがあったことは知っているが、全て断ってしまった。と言うのも、自分には秘密にしておかなければならない事が多すぎて、上手く話を躱かわせるか自信が無かった。  絶対にみんな知りたがって聞いてくるだろうし、それに対して教えられないとばかり返していたら、きっと白けさせてしまうだろう。
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