歪み

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 第二王子のライアンの愛猫である私が倒れたという事で、お城は大騒動になった。  獣医も招集されたが、魔獣ということで、この国一番の魔法使いである女性、キャシー達のお祖母様も駆けつけた。 「なんなの、これは!一体誰がこんな魔法を使ったの!」  お祖母様の第一声がこれだった。 「中途半端な魔法がいくつか複雑に絡み合って…酷い歪み!その上、この魔獣の主人はどこにいるの?魔獣の力の源は召喚した主人なのよ!これじゃ間もなくこの子死んでしまうわ!」 「あ、あの…魔法を使ったのは私です。私が魔法を失敗して…それでまた魔法で何とかしようと…」  キャシーがおずおずとお祖母様の前に出た。 「キャシー。魔法を学ぶのは何歳からでしたか?」お祖母様が尋ねる。 「……20歳です」 「あなたはいくつ?」 「19歳です」 「そうね、まだ使っていいはずは無いわよね。その上、失敗を隠そうとするなんて…。さて、どうしましょうか」  青ざめ、完全に委縮してしまっているキャシーは震える声で懇願する。 「ルナを、助けてください。お願いします」  お祖母様はため息をつき、 「最初から失敗を隠そうとせず、相談しなさい。あなたへの罰は後程検討しましょう」  と言って、私に手をかざす。 「……キャシーが最初の魔法を使う直前まで時を戻します。全て、無かったことに」  ……全て? 「や…めて…」  私はお腹に目一杯力を入れて、なんとかその言葉を発することが出来た。  動けず切れ切れに意識が飛びながらも、耳はそれなりに聞こえていたので状況が把握できていた。  だめよ、全て無かったことにされてしまっては、レイナはジェラルドに出会えない。レイナの幸せが、無かったことになってしまう。
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