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「それで、本当にやるのか」
放課後の非常階段で、朔が瑞月を見下ろしている。瑞月は手摺りに上体を預け、干された布団のごとくぐったりと両腕を垂らした。
「仕方ないじゃない。あの子たちだけでやらせるなんて心配だもの」
「意外に面倒見がいいんだな」
「あなたは満更でもなさそうね」
朔はこれ見よがしに舌なめずりをした。
「お生憎様。きっちりと送り返してやればいいのよ。あなたの出る幕はないわ」
「おや、残念。邪魔しに行こうかな?」
「絶対にやめて。こっくりさんにあなたの退治方法を訊いてやるわよ」
積極的に取り組もうとしている佐和子は自業自得だが、巻き添えを食っている奏流や千咲に何かあったらと思うと放っておけない。それに、万が一こっくりさんに呪われてしまった場合でも、朔がいれば何とかなるという算段もあった。
いや、しかし。
「朔、こっくりさんなんて楽勝よね?」
念のために訊ねてみると、朔は深々と溜息を吐いた。
「どうだろう。自信がないな」
「えっ」
「冗談だ。おやつにもならん」
「どっちなのよ」
そんなことを言っているうちに、瑞月はほんの少し落ち着きを取り戻している自分に気付いた。
スマートフォンを見る。約束の時間が迫っていた。瑞月はすんと短く息を吐き、非常階段を後にした。
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