3.こっくりさん

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 オカ研が活動に使っている一年C組の教室には、既に奏流、千咲、佐和子の三人しかいなかった。瑞月が教室に入っていくと、ちょうど佐和子が奏流にカーテンを閉めさせていた。 「電気点けていいかしら?」  と、瑞月が訊ねると、入念に十円玉を磨いている佐和子が制止を掛ける。 「ダメダメ! 雰囲気がなくなるじゃん」 「雰囲気って」 「へっへっへ。皆の衆、集まってくれたまえ」  佐和子は昂ぶりが抑えきれないのか揉み手をしている。三人は渋々ながら、佐和子の座る机を囲んだ。 「ここ、誰の席?」 「知らない」 「なんか……可哀想だね、ここの人……」  千咲の顔は怯えを通り越し、虚ろな表情を浮かべている。奏流は一度怪異を体験して鍛えられてしまったのか、今回はかなり楽観視しているらしい。瑞月が参加してくれるというのもその一因だろう。  卓上にはカタカナで五十音と漢数字が記された紙が広げられている。五十音の上部には鳥居のマークが、その左右には「はい」「いいえ」の文字が記されている。鳥居の上に置かれた十円玉が、妙に物々しい空気を漂わせていた。 「これ、佐和子ちゃんが作ったの?」  誰もが一度は見たことのある用紙の実物に、奏流の興味は釘付けになった。佐和子は得意げに腕組みをしてみせる。 「もちろん。昨晩丑の刻に鏡の前で書き上げました」 「なんかもう色々混じってるわね」  瑞月はすっかり呆れ顔だ。  佐和子に急かされて、一同は十円玉へと指を載せる。指先に感じたほんの僅かな冷たさが、背筋を伝って全身へと行き渡る心地がした。
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