じゃわめき(ドキドキ)

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じゃわめき(ドキドキ)

 ぱや、ぱや。  からっぽの手のひらに、雨っこさ落ちてくる。  さらさらとした、(ぬぐ)い雨が。  でも、(わー)のまわりの地面はかわいてて、私だけがぬれてる。  ああ、そうか。雨さふらささるのは、私の(まなぐ)であった。  足元にあるまっ黒ぇボールが、のばした手をはねのけた、|かしゃぐしゃな(うるさい)音が二回。  それが、私さ泣がせたんだ。  でも、雨はそれだけではねぐて。  頭の上から、雲一つない空から、みぞれみたいな(しゃっ)こい言葉の雨がふってくる。  ーーそんなのも取れないのかよ  ーーさわったんならはじき出せたろ  ーーだれだよ、女なんかにキーパーやらせたの  年上の男の子たちにぐるりとかこまれた私は下向いて、冷こくてぬれない雨にただ打たれっぱなすでいた。かにじゃ(ごめんなさい)と言いかけたくちびるを、ぐっとかむ。口さ開げたら全部、泣き声になるはんで。  卒園したての春休み。いきなり三年生くらいのチーム入れられで、(こび)れた軍手さはがされて。  ゴールキーパーなど、わんつか(少し)もやりたぐねがった。ボールが自分の体に当たれば(いで)し、飛びつけば地面に落ちで痛ぇ。  でも、一番痛ぇのは、ゴールを決められた時。胸さ(へず)ねし、(はばけ)そうだ。それがもう二回も。  だば(もう)まいね(ダメだ)。  キーパーなんてやりたぐね。シュートして、ゴールを決めるほうがずっと楽しい。  そう言って、軍手さなげようとした。
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