じょんばけっつ(大きなおしり)

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「中学も高校も来週から期末テストでさ、部活動がない。そしたら弘前でジョナが試合してるっていうじゃん」  青森ジョナゴールド、通称ジョナは青森市にあるサッカー少年団。津軽地方では無敵をほこる街クラブだ。チーム名とカラーは黄色いリンゴ、ジョナゴールドからつけられた。 「みんなうまいね、コマみたいにクルクル回る」  雪深い青森。外で練習できる期間は短く、その間は体育館で練習する。長いボールなんて蹴れば鉄筋の屋根にひっかかって落ちてこない。  だから、足元のテクニックをみがく。シザース、エラシコ、ダブルタッチ。ジョナに入団した選手はありとあらゆるドリブルを徹底的にしこまれる。 「うちの中学にも毎年ジョナの卒団生が来るし、一度ごあいさつしとかなきゃって。そしたら見なれた顔がいたってわけ。いやー、まさかあんたがジョナの選手だとは思わなかったわ」  選手に足元の技術を求めるのがジョナのサッカー。ゴールキーパーでも例外ではなく。  バックパスをキーパーが足で止める。相手の選手がつめられたので大きく蹴り出す、ふりをしてかわす。かわした相手にマークされてた味方がフリーになってるのでそこにパスを出した。 「最近はやりだよね、ゲーム作るキーパー」  私は、足元はからっきしだ。バックパスなんか来たら空ぶりしてオウンゴールしてしまうか、パスを相手にぶつけて無人のゴールにシュートされてしまうだろう。
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