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「ま、マネージャーには関係ないか」
「マネージャーじゃないです、お茶当番です」
「昭和か」
お茶当番。
少年団の監督やコーチというのは基本的にボランティアだ。うちの監督も本業はリンゴ農家、これで生活しているわけではない。
だから、監督の飲むお茶は子どもを見てもらってる親が用意するもの、という考え方。それを持ち回りで行うのが、お茶当番。監督のお弁当も用意するし、お茶だって選手の水筒が空っぽになってもいいように大きな水筒に麦茶を用意する。夏も冬も。
ところが、うちは食堂をいとなんでいる。つゆ焼きそばとドラムを叩くゆるキャラが有名な黒石市にある「やきそば くんど」という店だ。くんどは工藤の津軽での読み方である。
試合のある土日の昼間なんて飲食業には一番のかせぎ時だし、私の父母はそういうのにとても非協力的な人だ。
私の学年が上がり、少しずつ試合にからめるようになると監督に呼び出された。
『工藤、おまえん家の事情はわかる。けど他のご家庭から苦情が出てるんだ。なんでおまえん家だけ当番免除されてんだって』
だから、ジョナでのお茶当番は私の仕事になってしまっていた。それも今日だけではなく、ずっと。
監督のお弁当も私が作る。業務用の冷蔵庫にある肉や野菜をいためて、ごはんのかわりに焼きそばをそえる。自分の分も作るから手間は同じだ。監督はそれを、おいしいもまずいも、いただきますもごちそうさまも言わずに食べる。
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