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試合はその後もジョナが一方的に攻め続ける。田村高校のコーチが見ている、と思うといっそう気合が入るのか、全員がボールを持つとドリブルでしかけ、めいっぱいテクニックを見せつける。
その中心にいるのはエースナンバー10をつける、飛田鷹央。私と同じ四年生だけど、三年生の時から六年生のチームに飛び級で入った実力の持ち主。今年から五年生をさしおいて10番をあたえられた。
あと、名字からも分かる通り、鷹央は飛田監督の息子だ。親のひいき目と言われたくないのか、監督は鷹央にだれよりもきびしく接している。鷹央もそれに答えるように得意のドリブルをみがいている。
「トビがタカを産むってか」
ケラケラとアッコちゃんが笑う。
「でさ、あの10番なの?」
「え?」
「あんたが会いたがってるその男の子」
私がサッカーをしている理由。それははるか昔、私を救ってくれた男の子にもう一度会うため。
「ちがう」
鷹央は、たしかにうまい。けどほとんどのプレーを右足一本でこなし、プレーもドリブル中心。ヘディングなんて一度も見たことないし、守備しなくても大目に見られている。
あの子は、右足も左足もヘディングも、パスもドリブルもシュートもうまかった。タックルやパスカット、シュートブロックと守りもサボらずやっていた。
何よりあの岩木山みたいな、両腕をいからせる鷹央の後ろすがたは、どうやっても岩木山のようななで肩とは重ならない。
「だったらさ、やめちゃえば? こんなチーム」
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