じょんばけっつ(大きなおしり)

9/24
前へ
/99ページ
次へ
 試合はその後もジョナが一方的に攻め続ける。田村高校のコーチが見ている、と思うといっそう気合が入るのか、全員がボールを持つとドリブルでしかけ、めいっぱいテクニックを見せつける。  その中心にいるのはエースナンバー10をつける、飛田鷹央(たかお)。私と同じ四年生だけど、三年生の時から六年生のチームに飛び級で入った実力の持ち主。今年から五年生をさしおいて10番をあたえられた。  あと、名字からも分かる通り、鷹央は飛田監督の息子だ。親のひいき目と言われたくないのか、監督は鷹央にだれよりもきびしく接している。鷹央もそれに答えるように得意のドリブルをみがいている。 「トビがタカを産むってか」  ケラケラとアッコちゃんが笑う。 「でさ、あの10番なの?」 「え?」 「あんたが会いたがってるその男の子」  私がサッカーをしている理由。それははるか昔、私を救ってくれた男の子にもう一度会うため。 「ちがう」  鷹央は、たしかにうまい。けどほとんどのプレーを右足一本でこなし、プレーもドリブル中心。ヘディングなんて一度も見たことないし、守備しなくても大目に見られている。  あの子は、右足も左足もヘディングも、パスもドリブルもシュートもうまかった。タックルやパスカット、シュートブロックと守りもサボらずやっていた。  何よりあの岩木山みたいな、両腕をいからせる鷹央の後ろすがたは、どうやっても岩木山のようななで肩とは重ならない。 「だったらさ、やめちゃえば? こんなチーム」
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加