じょんばけっつ(大きなおしり)

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「顔上げな、金魚」  ゴールマウスの裏から声がする。 「やられたもんはしょんない。けど、どうして失点したかは考えろ。理由は一つだけじゃないはずだ」  なかなか答えられないでいると。 「こっち向け」  首だけ声のするほうにかたむける。赤と白にぬられたゴールの向こうで、アッコちゃんが両手を広げている。 「フットサルのゴールマウスは高さ2メートルこ幅3メートル。サッカーのゴールより横がずっとせまい。なのに体を倒したもんで、はみ出た手足ゴールのないところまで守っちまってたよ。他は?」 「声が小さかった」 「声の大きさだけじゃない。ただ左、って言ってもそっちに何があるのか、そしてどうしてほしいのかも言わなきゃ伝わらない。それだけ?」 「飛び出すタイミングが、おそかった」 「そこだ。さっき、何きっかけで前に出た? 監督にどなられたからだろ? なんで自分のタイミングで出ない? 本気でゴールを守りたいなら、すべて自分でしきれ。地に足をつけて、味方を動かして、出るか待つかを決めろ。キーパーなら責任から逃げるな」  足音、笛の音、かけ声。コートの上にはいろんな音が絶えずする。けど、その時だけは、アッコちゃんの声だけが私の耳にとどいた。 「あんたは、いくじなしなんかじゃない」
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