じゃんぼ(髪の毛)

1/14
前へ
/99ページ
次へ

じゃんぼ(髪の毛)

 その年のクリスマスイブは月曜日だった。  ふつうなら家でケーキを食べたりデートしたりする日に、私はなんで、この世の果てのような場所にいるんだろうか。  私立青森田村高校。通称、タムコー。  JR青森駅からバスで20分、こんなところに学校が、ってくらい何にもないところにある中高一貫校。東北地方を平定した伝説の人、坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)にあやかって名づけられたらしい。  照明つきの人工芝のサッカーコートが二面もある。けどそのうち一面はうすよごれた雪が山盛りで使えない。  そしてもう一面で、私をふくめたたくさんの小学生がドッジボールをしている。12月の青森市の夜は晴れてても氷点下になり、ボールが手に当たれば悲鳴が上る痛さだ。  だから相手がボールを持ったら後ずさりして味方をタテにして、顔めがけて飛んできたらしゃがみ、足をねらわれたら足を広げてしゃがむ。  もしも足もとにボールが転がったらとなりの子にまかせる。高いパスが回ってきたら手をひっこめる。だれかにぶつけたら絶対にやり返される。そんなことはされたくない。  目の前に壁があったら回り道、道がなければ引き返す。  今日までそうやって生きてきた。明日からもそうやって生きていくのだろう。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加