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じゃんぼ(髪の毛)
その年のクリスマスイブは月曜日だった。
ふつうなら家でケーキを食べたりデートしたりする日に、私はなんで、この世の果てのような場所にいるんだろうか。
私立青森田村高校。通称、タムコー。
JR青森駅からバスで20分、こんなところに学校が、ってくらい何にもないところにある中高一貫校。東北地方を平定した伝説の人、坂上田村麻呂にあやかって名づけられたらしい。
照明つきの人工芝のサッカーコートが二面もある。けどそのうち一面はうすよごれた雪が山盛りで使えない。
そしてもう一面で、私をふくめたたくさんの小学生がドッジボールをしている。12月の青森市の夜は晴れてても氷点下になり、ボールが手に当たれば悲鳴が上る痛さだ。
だから相手がボールを持ったら後ずさりして味方をタテにして、顔めがけて飛んできたらしゃがみ、足をねらわれたら足を広げてしゃがむ。
もしも足もとにボールが転がったらとなりの子にまかせる。高いパスが回ってきたら手をひっこめる。だれかにぶつけたら絶対にやり返される。そんなことはされたくない。
目の前に壁があったら回り道、道がなければ引き返す。
今日までそうやって生きてきた。明日からもそうやって生きていくのだろう。
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