私を待っていたのは

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私を待っていたのは

 好きな人と好きだと言ってくれる人。  同日に、その二人からプロポーズをされるなんてことあるだろうか?  私は今、自分の将来について、真剣に考えていた。  どちらの手を取るべきなのか。  結婚は一生もの、それならば最良の選択をしたい。  自分の想いに正直になるならば、今お付き合いをしている修二さんを選ぶだろう。  年齢は十歳年上、頼りがいのある上司。  ただ、経済的な面を考えると、普通のサラリーマンの修二さんよりも、御曹司である幼馴染の彰に軍配が上がってしまう。  別に二股をかけていたわけじゃない。  付き合っていたのは修二さんだけ。  でもね、私だって二十八歳、もう、三十歳手前だもの。  幸せになりたい気持ちは誰にだってあるでしょう。  今夜十九時に修二さんと待ち合わせ、レストランでプロポーズを受けた。  この瞬間を五年間も待ち続けていたはずなのに、この後会う約束をしている彰の顔が過る。  「返事はまた今度」と焦らすようにはぐらかし、抱きしめあって修二さんと笑顔で別れた後。  今度はバラの花束を抱えた彰にプロポーズされるとは。  いや、彰が私のことを好きなのは中学の時から気づいていたから、意外ではなかったし、いつかそうなるかもと予感はしていた。  でもまさか同じ夜にだなんて……。  彰にも「返事は次の時に」と期待を持たせるような笑顔で家路につく。  一体、私は修二さんと彰のどちらを選ぶべきなのだろうか?   どちらを選べば、より幸せになれるのだろう?    重いため息をついて、カードキーで自室マンションの扉を開けた。  開けるまでは、気付かなかった。  リビングから漏れる灯り。  ああ、またやってしまった、今年何度目かの電気の消し忘れ……。  ガチャリと力無く開けた先には、煌々と電気のついたリビング。  そして。 「「おかえりなさい、里保」」  声のそっくりな二人の女性が、テーブルを挟み向かい合って座っていた。
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