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逃走開始
行方をくらます前に念入りに準備を行った。
逃げるが勝ちだが、社会人として受けた仕事は最後まで責任を持って終わらせないといけない。
そのため、逃げだすタイミングがなく、逃げ活を始めて半年の月日が経っていた。
逃げるは恥だが役にたつというハンガリーのことわざがある。
今自分がいる場所、置かれている状況にしがみつく必要は無い。
自分の得意なことが活かせる場所へ逃げることを選択肢に入れよう。
自分のいる場所は選べ。
生まれる前から聡太の奥さんになる事が決まっていて、建築関係の進路しか選択させて貰えなかった。
別にやりたい仕事なんてなかった。
母に全てを決められていたから、夢なんて抱けなかった。
頭脳明晰で才色兼備な聡太と模試の成績で比べられ卑下され、聡太に尽くして生きていけと言われてきた。
逃げだす前に子供を授かっていたら、聡太と生きていくつもりだった。
妊活を始めて1年が経つも授からなかった。
「私の人生は、私のもの」
聡太が出勤で家を空けてる時に、私は家を飛び出した。
新しい番号でスマホを契約し、こっそりネット銀行口座を作り、貯金を移動させた。
バレずに使える逃走資金と情報収集のためのスマホさえあれば、逃げきれる。
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