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それほどに
そして少し時間が経ち、春になり、私は小学4年生になりました。姉は卒業し、私はひとりで家に帰っていました。田舎なので下の学年の、同じ帰り道の子はいませんでした。
すると以前、黒猫を見かけた少し先の家の庭に猫が数匹いるではありませんか。
あの猫もいる。
そう思って道路向かいの家に近づいていきました。
その猫たちは大きな音にはびっくりするけど、とても人馴れしている猫たちでした。
私はランドセルにジャラジャラとつけたキーホルダーを肘あたりで押さえ、音のならないようにし、ゆっくりとしゃがみながら近づいていきました。
自分の家の猫とは違い、なんだか噛まれそうな気がして、鼻を近づいて手の匂いをかごうとしてくるのが少し怖くて、耳と耳の間を人差し指で、撫でていました。
数日後に6年生の二人のうちの一人があの家の猫を撫でていました。あまりその人と話したことはなく、ただ無言で、私とその人で猫を撫でていました。
猫好きの二人は、どちらが先に猫を撫で終えて、先に帰るか。先に帰ったら負けのような気がして、猫好きの威厳に関わるような気がして、なかなか帰ることができませんでした。
勝ったのは私でした。その人が帰ったあと、すぐに帰りました。そしてまた家の方に歩きました。だけどなんだか、あの人と少し心が通じ合ったと感じました。猫たちのおかげです。
帰ると、仕事から帰ってきていた母がいました。母はびっくりしたように、
「今帰ってきたの!?」
と言いました。
時計を見るともう時間は5時に近づいいました。4時が、下校時間なので、1時間近くも猫を撫でていたのです。
小学生の私は腕時計を持っているはずがなく、帰り道に時計を見ることのできる場所などなかったので、そんな時間になっていたとも気づいていませんでした。
母は帰ってきたばかりで、私がいないことに気づき、買ってきた食材を冷蔵庫にしまってから、私を探しに行こうと思っていたそうです。母にとても心配をかけたと思います。お母さん、あのときはごめんなさい。
あれから節度を守って猫を撫でていました。撫でていると、近くを通ったおばあさんに
「ノミとか、ダニとかつくからあまりさわっちゃダメだ。」
と言われ、知らない人だけど一応
「はい。」
と言っておきました。
猫はいる日と、いない日がありました。猫は自由気ままに暮らしていました。
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