高校入学

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学校側の厚意で、私たち3人は同じクラスになった。 最初は席順もあいうえお順で、ひな(朝比奈)と私(朝本)は前後だ。 でも、席が悪かった。 あ行の私たちは1番廊下側の列。 ひなは更にひと目に触れやすい1番前の席。 入学翌日から、神レベルのイケメンと噂を聞きつけた人が押し寄せた。 アワアワと焦り固まるひなを見て、恭ちゃんが遠征してくる。 「ねぇ、この人めっちゃイケメンだけど、人に興味ないのよね〜。俺にしとかない? そこの彼女可愛いねぇ。何組? え?あちらは綺麗な先輩だよ〜 せんぱーい、僕橋本って言います。橋本 恭平ですぅ。僕のこと、可愛がってくださいね〜」 ひなの盾になる場所に立ち、マシンガンのように捲し立てていく。 休み時間が始まり少し経ったところで、ギャラリーにはわからないように恭ちゃんがコンコンと机を叩いて合図する。 「橋本くん、いい加減静かにしてもらえませんか?読書の邪魔です。そこの人達と話したいなら、向こうに行ってください。」 静かに、冷ややかにひなが言う。 諦めて帰って行く人もいたし、チャイムが鳴るまで廊下でざわついてる人達もいた。 昼休み、私たちは社会科準備室にいた。 休み時間の度に押し寄せる人の多さを見兼ねた担任の山口先生が、場所を提供してくれたのだ。 「ねぇねぇ、あの人達傷付かなかったかなぁ。すごく酷い言い方しちゃったけど、大丈夫かなぁ」 シュンとした様子でひなが項垂れる。 明らかにわんこの尻尾が下がっている。 元々穏やかな性格で、人と争うことが苦手。 わざと感じ悪くするなんて、ひなには辛い行動だろう。 「うるさいって伝えただけなんだから、問題ないよ。気にすることないさ」 恭ちゃんがひなを慰める。 「大丈夫だよ。早く穏やかな高校生活が送れるようになるといいけどね」 私も付け加える。 恭ちゃんと私は七海ちゃんが用意してくれたお弁当を頬張る。 ひなは「えー」と机に伏せる。 「それにしても、なんであのクラスはあんなに人が集まるのかな?他の人達もうんざりだろうね」 ひなは自分の容姿が人を惹きつけることに気付いていない。 「拓のイケメンぶりも、あの頃よりは磨きがかかってるしね」 「ま、もう少しの辛抱でしょ。それにしても、ひな見たさに人が集まって来るのに気付いてないんだね」 恭ちゃんとコソコソと話す。 「ほらほら。七海ちゃんの卵焼きだよ、美味しいよ」 好物を目の前にしても、なかなか立ち直れない。 「朝比奈君、食べないと強敵に立ち向かえないよ〜」 3人のやり取りを聞いていた山口先生が、のんびりした口調で言う。 「そうですね」 尻尾はまだ下がったままだけど、やっと箸を持った。 塩対応は功を奏し、ひな見物の人手もGW前には落ち着いた。 ひなの疲労と反比例して。
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