高校入学

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GWに入るとひなは熱を出したらしい。 入学からの疲れが出たのだろう。 休み明けの朝、ひなの頬はちょっとやつれていた。 「ひな大丈夫?」 「熱出てたんだろ?」 「でも、熱のおかげでよく寝たよ。」 ゆったりとひなが笑う。 少しやつれてはいるが、穏やかなひなの笑顔にホッとする。 互いにGW中のことを話しながら駅に向かう。 数日ぶりの3人の空気感は、妙に心地いい。 駅までの少しの時間が、ひなが冷徹の仮面を被らずに済む時間だ。 恭ちゃんも私もリラックスできる。 それでちょっと油断してしまった。 駅前に建った新しいマンションから出てきたクラスメイトに気付かなかった。 「朝本さん」 背後から急に声をかけられて、驚きで変な声が出てしまった。 「うぉっ!………え、えっと…たしか…」 名前を必死に思い出していると 「野々村さん、おはよう」 恭ちゃんが声をかける。 「席が俺の前なんだよね。野々村さん、家この辺りなの?中学校は別だから、最近引っ越して来たの?」 ひなに話題が向かないように、恭ちゃんが矢継ぎ早に野々村さんに話しかけている。 「中学は東三中。2月にそこのマンションに引っ越して来たんだけど、卒業まで少しだからそのまま通ったの。橋本くん達はこの辺りなんだね。」 後ろに野々村さんと恭ちゃんの会話を聞きながら、大丈夫?と声には出さずにひなに聞く。 頷いて、カモフラージュにイヤホンを着けるひな。 なんだか、3人の大事な時間が意図的でないにしろ、壊れてしまった。 そんなことを思ってしまった自分にモヤモヤとした。 その次の朝から、駅前の道で野々村さんと合流してしまうようになった。 私もコミュ力が高いわけではないので、もっぱら野々村さんの相手は恭ちゃんにおまかせしている。 野々村さんは控えめで、自分で言うのもなんだがツンツンした私とは違い、柔らかい「ザ•女の子」の印象だ。 ひなの見物に来ていた、ガツガツとした肉食系女子とは一線を画している。 もしかしたら、本当にただ通学路が一緒なだけ? ほんの少し、気を許してもいいのかもと思った夏休み前。 その瞬間がやってきた。 「夏休みも会えたらいいな」 「みんなで宿題する?」 「えっ?恭ちゃんと2人でしたらいいんじゃない?」 もしかして恭ちゃん狙い?になけなしの希望を賭けてみたけど、 「できれば…4人で会えたら…なって…」
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