ひなと私

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わたしにはひなに感謝しても感謝しきれないことがある。 パパが亡くなった時、私は毎日毎日泣いていた。 『パパのすがたかたちはなくなるけど、いつまでもだいすきだよ えとはパパとママのたいせつなたいせつな、たからものだよ』 パパが私に遺してくれた手紙だ。 最期を悟ったパパがママにも内緒で書いていた物らしい。 その手紙を握りしめて、毎日泣いていた。 幼稚園にも行けなかった。 ひなは何も言わなかったけど、側に居てくれた。 時々寂しくてひなの手を握ると、ギュッと握り返してくれた。 「ひな、ひなはいつも笑ってて。えとはいまは笑えないけど、ひなが笑っていてくれたら、いつか笑えるようになるから」 1週間くらい経って、やっとしゃべることができた。 それからひなは、転んでも知らない人を前にしても、私を見る時は笑顔でいてくれる。 私はパパの死後、私だけ笑っていいのかと悩み、泣いたらママを困らせるんじゃないかと考え、感情を抑えるようになっていった。 それでもひながいれば安心していられた。 ひなを守っているつもりで、実はひなに守られていたのだ。
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