11人が本棚に入れています
本棚に追加
来てしまった夏休み
景色の境界線がくっきりとする夏が来た。
そして憂鬱な夏休みも来てしまった。
恭ちゃんが提案した図書館での勉強会は実現することとなった。
私はひとりの方が勉強が捗るのだけれど、ひなと野々村さんとのことが気になるので、結局参加することにした。
図書館前で立っている野々村さんを見つけた時、やっぱりというか可愛らしいワンピースで、ふんわりとした雰囲気を纏って立っていた。
ひなの好きな感じだなぁ。
私はというと、Tシャツにジーンズ。動きやすさ重視の格好だ。
モテファッションは考えたことがないし、スカートは制服だけでいい。
隣のひなの反応が少し気になって、チラリと見上げてしまった。
今日も美しいなぁ、とほんの0.5秒見惚れてしまい、急いで視線を戻す。
「ん?どうかした?」
ひなのやわらかな声が降りてくる。
「なんでもないよ。暑いから早く入ろっ」
「恭ちゃんは?」
「中に居るってLINEしとけば大丈夫だよ」
「野々村さん、おはよう!暑いから中に入ろっ」
「あ、おはよう。橋本くんは?」
「恭ちゃんはまだみたい。LINEしとくから大丈夫だよ」
「そう?」
「そうそう、大丈夫。それにしても、私服可愛いね。制服でも可愛いけど…羨ましい」
「そんなっ…私は朝本さんがカッコよくて羨ましいけどな。朝比奈くんもそう思わない?」
「2人とも似合ってて、いいと思うよ」
私はひなのこういうところがいいなと思う。自分の好み云々ではなく、それぞれの良さを認めてくれる。そして、人の見た目を決していじらない。
七海ちゃんや家族からの愛情をたくさん受けて、まっすぐ育ってきたもんね。
最初のコメントを投稿しよう!