来てしまった夏休み

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来てしまった夏休み

景色の境界線がくっきりとする夏が来た。 そして憂鬱な夏休みも来てしまった。 恭ちゃんが提案した図書館での勉強会は実現することとなった。 私はひとりの方が勉強が捗るのだけれど、ひなと野々村さんとのことが気になるので、結局参加することにした。 図書館前で立っている野々村さんを見つけた時、やっぱりというか可愛らしいワンピースで、ふんわりとした雰囲気を纏って立っていた。 ひなの好きな感じだなぁ。 私はというと、Tシャツにジーンズ。動きやすさ重視の格好だ。 モテファッションは考えたことがないし、スカートは制服だけでいい。 隣のひなの反応が少し気になって、チラリと見上げてしまった。 今日も美しいなぁ、とほんの0.5秒見惚れてしまい、急いで視線を戻す。 「ん?どうかした?」 ひなのやわらかな声が降りてくる。 「なんでもないよ。暑いから早く入ろっ」 「恭ちゃんは?」 「中に居るってLINEしとけば大丈夫だよ」 「野々村さん、おはよう!暑いから中に入ろっ」 「あ、おはよう。橋本くんは?」 「恭ちゃんはまだみたい。LINEしとくから大丈夫だよ」 「そう?」 「そうそう、大丈夫。それにしても、私服可愛いね。制服でも可愛いけど…羨ましい」 「そんなっ…私は朝本さんがカッコよくて羨ましいけどな。朝比奈くんもそう思わない?」 「2人とも似合ってて、いいと思うよ」 私はひなのこういうところがいいなと思う。自分の好み云々ではなく、それぞれの良さを認めてくれる。そして、人の見た目を決していじらない。 七海ちゃんや家族からの愛情をたくさん受けて、まっすぐ育ってきたもんね。
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