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「お前がオルメロスか。本部のバシル=イクスリアの甥だって? 似てねえなぁ んん?」
お茶の時間になって現れた別邸の主は、どっかりとソファに腰を下ろし、メロスを見るなり顎髭を撫でて上から下までざっと眺めた。イオとメロスは両手を体の横にぴったりと揃えて直立不動になる。
「楽にしろ。せっかく茶も淹れたんだ熱い内に飲め」
「お砂糖とミルクはこちらに。では旦那様、私は別室で控えております」
「おう、頼んだ。何突っ立ってるんだ。座れ」
三時を知らせる鐘がなり、イオとメロスは改めて邸内の一室へと通された。少しばかり遅れてヴラドがやってくると、すぐさま立ち上がり礼をして今に至る。そして二人で視線を合わせ、伺うようにソファに腰を下ろした。
「さて…騎士団の青臭えひよこ共。今日は遠足前の打合せだ。途中で寝るんじゃねえぞ? んん? 特にイオギオス」
ヴラドからの指名にイオは目を瞬かせふにゃりと笑った。
「嫌ですねぇ閣下。あなたの迫力を目の前にしてたら、流石に昼寝もできませんよぉ」
「相変わらず口がよく回るなお前は。そっちのガチガチになってるオルメロスも楽にしろ。茶も菓子も飲め、食え。家内が茶に煩くてな。俺にはさっぱりわからんのだが」
「……いただきます」
メロスが先に陶器の杯を手に取り、茶を口にする。唇に触れる生地は薄くなめらかに仕上げられており、茶のキレのある味が普段飲んでいるものよりも数段上で、香りも花なような芳しさがあった。
「美味しい…」
メロスの様子を眺めながら、イオは自分の腹をさすった。
「ヴラド閣下、先日頂いたご指示ですが……」
「おう」
「森の中にいる二人を、連れ出せというのは?」
「何故それを聞く、イオギオス」
メロスは親友が獅子を前に立ち向かっていく姿を見ながら、じっと沈黙して彼に場の流れを任せた。
「……魔王かもしれない存在を森から連れ出して、ご自分の前に、というのは危険ではありませんか」
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