宝石色のモラトリアム

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あたし、愛原珊瑚(あいはらさんご)の朝は忙しい。 髪をカーラーで巻いて、その間にご飯着替えヘアセット。 朝食を欠かすとね、一日中お腹痛いんだよね。 スクールメイクは念入りに。テンション上げ! 「あ〜……漢字の小テスト……濃いめリップにしよ。」 メイクに合わせたイヤリングを選んで、あ、ピアスじゃないんかって思ったんでしょ。 ビビりなんです〜。この世で一番怖いのは注射ね。 前髪命!!絶対崩れないよう、念入りに固めて出発!!あー、強風吹いてたら萎えるな。 「おはよ〜。」 「はよ〜。」 「サン、おはよ〜。」 「サンサンが来たぞ〜。」 「やめてなんかラーメン屋みたいじゃん!」 騒がしい仲間はもうあたしの机の周りで駄弁っていた。 「は〜。あたし幸福な女だわ。」 「急にどした?前髪うまくいってるから?」 「違うも〜ん、それもある!」 「どっちだし。」 何の違和感もなく自分の居場所に入り込める幸せを言葉の裏で噛みしめる。 いわゆる陽キャ、カースト上位グループの自覚はある。 メイク、アクセ、なんでもオッケー。 ゆる〜い校則の恩恵を最大限に受けているあたしたちは世界一ハッピーな高校生活を送っている。
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