宝石色のモラトリアム

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「でさー、やーっぱあたし、ブルベだと思うのよ。新作マスカラ買っていいかな?!いいよね!ね?!藍川さん!」 「え……知らないけど……。」 「ちょっとサン!なに急に藍川さんに話振ってんの。」 「困ってんじゃんか〜。サンたまにそーゆーことするよな。」 「えへ、ごめんごめん。なんだかんだ藍川さん、ちゃんと返事してくれるからさぁ。」 もう〜なんて仲間の声を聞きながら、チラリと斜め前の席を盗み見る。 ほっそい体に白い肌、暗い青の重い髪。 あたしとは、ついでにアキラやミドリとは真逆の生き物。 (正直……めっちゃ好き。好きです藍川さん。真凛ちゃんって呼びたいです。) 藍川真凛はいつも一人イコール自分の芯があるって等式、あるんだよね。憧れの要因の一つなのかも。 (あたしは……いつも誰かといないと不安だからなぁ。) アキラとミドリとのおしゃべりに戻りつつ斜め前の席の気になる人に意識のかけらを配った。
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