宝石色のモラトリアム

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かくして……あたしは帰りのHRの後、気になる人の前で視線を泳がせていた。 鞄の持ち手を握っている細い手首は警戒しているように見える。 「なに?」 「あー……あのさ……今日委員会とかある?」 「そういうの入ってないけど。」 「そか。じゃあ、えと、あの……一緒に帰らない?」 「いいよ。」 「そっかー、やっぱそ……え、まじ?」 後半の全く同じセリフがちょっと後ろから聞こえてきた。ミドリ、アキラ、しっ!! 「行こ。」 「う、うん!」 困惑顔でガッツポーズする親友2人に手を振り、足早に教室を出る藍原さんを追いかける。 振り返ると他にもポカン顔が目に入った。 質問攻めに遭う2人にまた手を振った。
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