宝石色のモラトリアム

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戸惑い気味のリンの手を引いて中庭に出る。 もちろんめっちゃ人はいるから空いてるベンチを探しまくりながら。 「いいの?オトモダチがなんか言いたげだったけど。」 「いーのいーの。言わなくても通じ合ってるからね!」 「そうは見えないけど。」 「言うねえ。ていうかリンさ、二人きりの時は割と大胆だよね。お口が大きくなるね。」 うりうりと唇に触れようとするとそのお口がちょっと開いた。 「まあ……愛原さん単体なら怖くないっていうか。」 「あたしの友達、怖い?」 「ずかずか入ってきそうなのがちょっと。友達になってもビクビクしながらつるむことになりそう。」 「そーかなー。てかあたしも結構ズカズカ系じゃない?」 「そうでもないよ。」 さらっとしたその言葉に驚く、と同時に照れる。なんか他の人と区別してくれたような。 「えへ、そっかあ。へへ。だから仲良くしてくれるの?」 「仲良くしてるつもりは……いや、まあそうか。」 すっとベンチに座りこれまたすすっとお弁当を開けたリン。あたしの語彙力やばいな。だってだって推しの前で上手く喋れる子いる?! 「なんか一口いる?」 「いらない。……なんでそんなショックそうなの。」 「通過儀礼だよ!!友達になるための!はい!!」 半ば強制的にミニトマトをシフトする。 これはあたしの気持ち、恋の始まりみたいな。なんちゃって。 ……え?恋?……今、恋って思った?うっそんリンに恋してるの確定事項? 急に熱くなってきた頬がバレないようにそっと隣を見ると、そのミニトマトが小さな口に入っていくところだった。 あ、あたしの恋の形!! 視線に気づき首を傾げたリンに心の中まで見透かされそうで。 当たり障りのない話題を振る。最大値のはずのコミュ力が仕事しない。 ちょっと揺れて見えたピアスに、ますます目線が合わせられなくなる。 あ、ダメだ、もうこれ恋。
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