マッチングゲーム

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 放課後。今日も俺は騎士になる。崩壊するお城から姫を助ける。これをやるときは美桜は隣にいない。お互い離れた場所でやる決まりだ。ゲームで言われた相性など、そんなに重要なのだろうか。  最初の選択肢が来る。姫を助けに行くか逃げるか。昨日、助けに行くと選んだらゲームオーバーになったので逃げるを選ぶ。てかなんで助けに行ったらゲームオーバーなんだよ。  このアプリの選択肢は数日で更新されて内容が変わってしまう。同じ選択をできるのは僅か数日。そのうちにクリアできなきゃまた振り出しだ。  逃げるを選んだならば物語は進む。どうやら姫様は自力で逃げ出して街のどこかにいるとか。  探すか諦めるかの選択肢。ここはもちろん探すだ。  選択肢は全部十程度。騎士は姫様を無事保護できたらクリアだ。姫様のほうのクリア条件が何なのか俺は知らない。美桜は教えてくれなかった。  街のどこに行くかの選択肢。川か路地裏か。  その時、フッと思い出す。昔はよく川で遊んだなと。美桜と一緒に泳ぐ魚を眺めるだけで楽しかった。川に向かって石を投げてみたり、川原で焚き火してみたり。  スッと川を選ぶ。ゲームオーバーにはならなかった。  次の選択肢の姫様の悲鳴が聞こえたとき、すぐに駆けつけるか人を呼んでから向かうか。  すぐに駆けつけるを選びたかったが一瞬悩む。昔もこんなことがあった。美桜が木登りして降りられなくなったとき、俺は人を呼びに行った。一人じゃできることが限られているから。  人を呼ぶを選ぶ。やはりゲームオーバーにならなかった。  昨日までカッコいい選択をしようとしていたけど、正解を選ぶのは美桜だ。また美桜の選択肢の正解を選ぶのは俺だ。美桜は今まで一問も間違っていない。俺の性格をよく知っているということだ。 「参ったな」  つい呟いた。美桜は俺をよく見ている。初恋相手が俺だというのは伊達じゃない。美桜がこのゲームを恋人になる条件に選んだのが納得できてしまう。
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