マッチングゲーム

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マッチングゲーム

 スマホアプリの画面。選択肢。どれを選べばいいか。答えは自宅で一緒にこれをやっている美桜にしか分からない。俺は美桜が答えに選びそうな選択肢をタップする。  ゲームは中世ヨーロッパのようなお城の滅びから始まる。崩壊するお城から逃げるか姫を助けに行くかの騎士の二択から始まる。美桜は美桜で姫のほうを操り、やはり二択を選ぶ。その答えを選ぶのは俺だ。  ここ数日、俺らはこのゲームに熱中している。面白いのもそうだが、一番の原因は俺が美桜に告白したことだ。 「嬉しいけど、空也との相性が気になるな……」  うまく避けられたように感じたが美桜はこのゲームを一緒にクリアできたならば付き合うよと条件を突きつけてきた。遠回しのお断りなのかと思ったら、毎日何回もこのゲームをすることになった。  画面にゲームオーバーの文字が踊る。瞬間に美桜からの着信が来る。 「もう! 最初でゲームオーバーなんて信じらんない! これじゃいつまで経っても付き合えないじゃん」 「ごめんよ……」  数日やって気付いた。美桜は俺と付き合いたいようだ。頑固だから素直になれないのだろう。 「このゲーム、クリアできたら相性最高だって友達にも自慢できるのに! ちゃんとお姫様を助けてよ!」 「分かった……。次は頑張る……」  俺以上に付き合いたいオーラを醸し出す美桜に俺はちょっと引いてる。好きだけど。  結局その日はクリアできずに終わった。  翌日、高校で美桜と顔を合わせると一気に笑顔になりこちらに駆けてくる。 「空也! もう少しだったから! あともう少しで恋人になれるから!」 「う、うん……」  なんてやり取りをしていると 「いや付き合っちまえよ」とクラスの誰かが呟いていた。付き合うためにマッチングゲームをしている俺らはすでに周知されている。俺だって普通に美桜を恋人として紹介したいよ。ただ美桜はいっぺん言い出したから聞かないから。  美桜をよく知る人たちは美桜の頑固さをよく知っている。美桜の初恋相手が俺なのも周知の事実だ。知らぬは美桜ばかり。だから告白もうまくいくと思ったのに、なんでゲームクリアが条件になるんだよ。  あれかな? 昔流行ってたっていう漫画の『私を甲子園に連れてって』みたいなものかな? 「今日は絶対クリアしようね! そして明日から恋人繋ぎで登校するんだ!」  それ、俺、今日やりたかった……。なんて死んでも口にできない。美桜と恋人になるにはマッチングゲームをクリアするしかなさそうだし。
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