喫茶ロブソン

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 ロブソンがなくなる。  そんなの絶対に嫌だ。 「やだ、寂しいじゃないですか。ならこの話、断ります」 「断っちゃだめよ。マキちゃん、本社が辛いって泣いてたじゃない」 「何十年前の話してるんですか。ここまで来たら地元よりロブソンの方が思い入れがあるし、そんなついでみたいに閉めないでくださいよ」 「違うの、そうじゃないわ。ごめんね、そうじゃなくて、私もきっかけが欲しかったのよ。とうとうほだされちゃったのよね」 「とうとう?」  首を傾げた私にルミコさんがはにかむ。 「天狗がね、就職して退職して起業して迎えに来たの」  ルミコさんがこぶしを握って鼻につけた。天狗のジェスチャー、らしい。 「天狗が、就職して退職して起業?」  あっけにとられた私にルミコさんはうなずく。 「お互いもう爺さん婆さんだしね。故郷の山で一緒に山菜売って暮らさないかって言われたら、それもいいかなって」 「あの、でも嫌がってませんでしたっけ?マーシャルアーツは?」 「そんなこともあったわね。私も今ならクマと相撲とっても楽しいかもしれない」  ルミコさんが笑って、冷蔵庫から山菜のパックを取り出した。触るとパリパリ鳴る薄い透明のプラスチックパックには金色の地に赤い天狗のイラストが描かれたシールが貼られている。 「天狗、頑張ったのよ。飛ぶしか能のなかったあの人がって思ったらなんだか可愛くてね」 「そうなんですか」 「そうなの。遠いけどマキちゃん、遊びにきてね」  
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