喫茶ロブソン

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「やだ、マキちゃん、疲れてるわね」  いつものようにカウンターに座ると、ルミコさんが眉をひそめた。  特にそんな実感はないけど、ルミコさんが言うならそうなのかもしれない。  第六感とでもいうのか、変に鋭いところがある人なのだ。  ルミコさんが「一雨きそうね」と言えば快晴でも雨が降るし、「早く帰った方がいいわ」とせかされたお客さんが、本来乗る予定だった電車の事故を間一髪免れたこともある。  逃げたインコを見つけただとか、ワールドカップの勝敗をすべて当てただとか、そんな話は枚挙にいとまがない。 「こういうときはあったかいものがいいわ。うどんでいい?」  言うなりルミコさんはさっさと厨房に立った。  ロブソンのメニューにうどんなんかないけど、ルミコさんは何でも作る。  ボタン鍋にも面食らったが、ハタハタ寿司とか、ボコボコとかいうアフリカ料理とか、作れるレパートリーもまた枚挙にいとまがない。  私はルミコさんが好きに作るものを食べ、ついでにルミコさんの晩酌に付き合うのが常だ。 「私、昨日フラれたんですよね」  本当に疲れていたのかもしれない。  うどんを食べ、お酒を飲んでいると思いのほか早く酔いが回ったようで、気がつけばゆるりと愚痴がもれていた。
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