喫茶ロブソン

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 もしかしたら、あの後悔が大きすぎて別れた男との約束なんてものは記憶からすっぽ抜けたのかもしれない。  それは三月にかかってきた一本の電話で、 その頃の私は卒業式も終わり、希望通りとはならずとも進学先が決まった安心感で毎日だらけて過ごしていた。  一応朝は起きるけど、寝場所をコタツに変えるだけ。お腹がすいたら何か食べるし、トイレくらいは行くけど、基本はコタツで寝っ転がって惰眠をむさぼる。  両親は仕事だし、妹は学校だし、おばあちゃんもデイサービスに行って家には私ひとり。  長かった受験生活も終わり、この一年、必死に勉強にあけくれて惰眠どころかまともな睡眠もとれていなかった私にとって、あの日々は必然のチルアウトだったと思う。  そんなある日、自宅の電話が鳴ったのだ。 「私、それ無視したんですよ。コタツから出るの嫌だし、どうせ太陽光パネルとかのセールス電話だと思って。でも後から考えたらその日は第一志望の補欠合格者に連絡が来る日だったんです」 「合格者ってネットで見られるんじゃないの?」 「一般的な合格者はそうなんですけど、当時その学校は補欠合格者には電話連絡ってなってました。数も少ないし、電話に出た順の早い者勝ちって」 「あら、そうなの。でもどうして自宅の電話に?絶対家にいるわけじゃないんだから携帯電話にかけてくれたらいいのに」 「そこなんですよね」 はぁ、と私はため息をつく。
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