喫茶ロブソン

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 ルミコさんが天狗と別れたのは三十歳になる手前の頃だという。  その後、何人かの男性と恋をして再婚したこともあるけど、今は独身だ。「天狗との結婚も人間との結婚も別に変わらないわ。どんなに運命を感じても、どこかが足りて、どこかは足りない」と。 「よく人生の別れ道とか言うけどね、あれ、私は違うと思ってる。大事な場面でだけ道が二又に分かれてるわけじゃなくて、本当の道みたいにいつも所々に別の道が分岐してるだけじゃないかしら」  そう言って、ルミコさんは自分と私のコップにお酒をつぐ。 「特別も何もない。毎日たくさんの選択を繰り返して一喜一憂しながらちゃんと立ってるの。人生ってそんなもんよ」  ルミコさんにそう言われると、そうか、人生はそんなもんか、とやっぱり腑に落ちた。
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