喫茶ロブソン

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 ふとしたときにずっと、あのとき電話に出ていたら、と思い返してきた。  就職活動中なんかは特に、学歴の高さは選考の優位さに繋がっていると感じたし。今いる本社だって、周りには私の第一志望を卒業した同僚がいて、当たり前のようにキビキビ働くその人を見ると自分のふがいなさにしょんぼりする。  でも、そんなもんだとしたら、確かに大したことないかもしれない。  実際いま私と第一志望卒の人は一応は同じ職場で働いているわけだし。十年ぶりに元彼にフラれた私と、劇的な恋をしながら天狗と別れたルミコさんだって肩を並べてお酒を飲んでいる。  道筋は違ってもとりあえずたどり着いたところは一緒、といえるかもしれない。  どんなに運命的でも、そうじゃなくても、みんなそれぞれちゃんとやっているのだ。 「それでね、天狗ったらまだ未練があるみたいでさ。時々ここに来るのよ。客として」  タタミイワシをばりばり齧って、ルミコさんが鼻の頭に皺を寄せる。
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