EP 10

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EP 10

「What?」 「だから、一緒に昼メシ食わねーかってこと」 八千穂が狂った。 なんだ? なにが目的か? 「なんで私が八千穂とごはん食べなきゃいけないわけ?」 「たまには良いだろ?」 「あんたの取り巻きはどうしたの。私、睨まれるのヤなんだけど」 八千穂が手に持っているのは弁当。もちろん八千穂の手作りだ。 八千穂のうちはシングルマザーで、お母さんは大学へ行きたいという八千穂の願いを叶えるため、相当働いて苦労して八千穂を育てたと聞いている。八千穂は八千穂で、お母さんの負担を減らすべく、料理を頑張ったらしい。 だから、好きで弁当男子になったってわけでもない。それに今は仕事で忙しいお母さんの分も弁当作ってんだからね! 取り巻きの方々っ、耳をかっぽじって良く聞けよ? 「今日は食堂には行かないって周知してある」 周知? 今、周知って言った? 「屋上だよ、いい?」 「お、おう!」 「陽当たりえげつないよ」 「わかってる」 「華さんが傷をえぐってくるよ」 「おまえのメンタルどうなってんの?」 私と八千穂は並んで階段へと向かい、階段を上がる。息があがってきて、八千穂のはっはっという短い息遣いを感じた。 変な感じ。 とにかく妙ちくりんなわけ。どんな意図があるのかわからないから、こっちはそわそわしちゃうんだって。 「華副社長に攻撃受けながらって、ちゃんと休めてるんか?」 妙に八千穂が優しい。 「大丈夫大丈夫。どっちかって言うと癒されてるから」 「ドMかよ」 ふすっと笑ってしまった。 * ちょま笑ったよ! ? 隣を歩く繭香の横顔を盗み見る。頬を緩めた柔らかい笑顔に、俺はびびびってきてしまった。さっきから、足元ふわふわ、おぼつかない。 嬉しさに胸を躍らせている。じわ〜。 「ベンチ狭いけど、ここで良い?」 しかもベンチ狭っっっ! ありがとう! ベンチの神様! 「別にここで良いよ」 心とは裏腹に、冷静ボイス。 よいしょと座ると……肩がくっついてるーー! ほわりと繭香の体温を感じて嬉しくなってしまった。もっと早くに勇気を出して、一緒に弁当食べれば良かった。 なーんて、じーんと幸せを噛み締めていると。 繭香が、膝の上に乗せた弁当箱を開けようとして、また閉じた。 「あんたの弁当から見せてよ」 「ん? 俺? 別にいいけど……はい、こんな感じ」
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