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「香山心(30)と申します。新参者でいきなりのポストに、みなさん戸惑いもあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」
白い歯と爽やかな笑顔がぺかーーーっと眩しい。私は思わず目を細めてしまった。
聞いちゃいないのに年齢までも。しかもヘッドハンティングで中途採用、いきなり商品管理課のチーフだとー!!
『M高校(有名)卒→英国留学(TOEIC・900点越え)→T大(有名)卒→M商事(一流企業)→indigo blue(なんで?)』
香山チーフのSun&Sunな笑顔に目を細めながら、私は心の中で独りごちた。
(社長がその人柄と経歴に、心の臓を撃ち抜かれてしまったと肩を落とした(※優秀だが高給取りのため)だけあって、もう眩しいしかないわ)
なんでなん? なんでここ?
確かに私ども『indigo blue』は中堅どこの中ではそこそこのネットショップではありますけれども。確かに社長、副社長ともども変わり者で、色んな意味で面白い会社ではありますけれども。
香山チーフの紹介と挨拶が終わり、私は疑問いっぱいの頭で、デスクへと戻る。PCを立ち上げると、さっそくチーフが寄ってきた。
「花崎さん、だったね?」
え、すご。もう覚えたん? すご。
「はい。よろしくお願いします」
「今って、どのジャンル探ってるの?」
「インテリアです」
「インテリアね。うちインテリア弱いもんね」
もしかしてショップの売り上げ、把握してる? ってか、経営なんかも?
だったら、ハイスペックすぎー。
「どんな風にリサーチしてるの?」
「えっと、今はファミリー向けのオシャレなアイテムを中心に探しています。インテリアと言ってもただ飾るだけじゃない、なんらかの機能が付加されていて、しかも便利なものを」
「そうだね。主婦層なんかは、生活に役に立つのかっていうシビアな目線持ってるもんね」
「はい。ただ飾るだけのものに、サイフの紐は緩めてくれないと思うので」
「花崎さん、なかなかイイねえ。どんな商品を選択するか、企画書楽しみに待ってるよ」
「あ、ありがとうございます」
「ひとつだけアドバイスしていい?」
八千穂以外の人からアドバイス貰うことも久しぶりだったので、私は素直に頷いた。
「はい、お願いします」
「君が選んだ商品ね、だいたい見せてもらったんだけど、自分で購入するかどうかの目線でチョイスしてるよね? それは全然それでいいんだけど、自分が買ったらこう使うだろうなっていうのを考えていると思うんだ」
「はい。いつもその商品を使っている自分を想像して、その使い心地とか利便性とかを考えています」
「だよね。でもそれだけじゃダメなんだよ。人ってのは価値観それぞれだからね。自分だけだと、想像力がせばまっちゃうだろ? だから、他の人を利用して想像力を広げるんだ。例えば君のお母さんならどう使うか? 例えば君の友達のあの子ならどう飾るか? ってね」
目からウロコがポロリと落ちた。
「は、へい、はい、なるほど」
事実、そこまでは考えていなかった。というか、いつもターゲットの客層は絞るのだが、身近な人に置き換えて考察することはしなかった。
「闇雲に、ただ想像上のファミリーの視線で商品を見ようとしても、それは君が作った虚像を脱することができないよね? だから、ここで君の身近な人の出番なんだ。周りをよく見てごらん。色々なタイプの人がいるだろ?」
「ふぇ、確かに……はい」
「じゃあ次からはそういう目線、使ってみて」
「……わかりました」
5分ほどアドバイスをすると、香山チーフは自分のデスクへと戻っていった。
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