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EP 7
私はPCを改めて開いてみた。今、気になっているのは、加湿機能がついたアロマディフューザー。部屋の加湿もできるし、アロマの香りも楽しめるという逸品だ。
「私なら欲しいかなって思ってたけど……」
そういえば高校時代の友達に、芳香剤の匂いが超絶ダメな子がいたな。でもこの商品なら、後付けでアロマオイルを垂らす仕様になっているから、匂いが全般的に苦手なら、加湿機能だけ使えば良い。なら、加湿器の値段としてはどうだ? ってことになる。
私はネットで加湿器の相場を調べてみた。すると、新機能の分、若干の上乗せ分があるが、バカ高くもないことがわかった。
「ならデザイン性がウケれば、ワンチャン」
シリーズの中でも一際スタイリッシュで、デザイン性の高い商品をピックアップ。感染症対策に乾燥対策、潤い、そして。
「別売りで香りの良いアロマオイルを付属させて……リラックス効果、と!」
別売りなら、アロマの香りを求める人だけが購入すれば良い。
キーボードをダカダカと鳴らしながら、企画書を書き上げていく。
「洋服にふわりと香りをつけて、香水の代わりにも」
出来上がった企画書を香山チーフに見せると、香山チーフは笑顔でOK、「いいじゃんこれ。よく頑張ったな」と、私の頭をその企画書でぽんぽんと。
そして。
「はいこれ。お疲れさん」
『チマチマ』とのコラボのコーヒー缶だ。
思いも寄らぬ急な労いに私は、「はっ! えっ? ふぇっ?」となったが、慌てて両手を出して受け取った。
「花崎、『チマチマ』好きなんだろ?」
「どうして知ってるんですか?」
「おまえの商品チョイスわかりやっす」
と、はははっと男らしい笑い声をあげた。
「ありがとうございます」
ととととにかく、企画書通った。
「ご助言、助かりました」
香山チーフが顔を近づけてきて、「役に立った?」
ちちち近ーい。イケメンの破壊力! 鼻血出る!
「はひーありがとうございます」
「どーいたしまして」
私は、『チマチマ缶』を両手に握りしめながら、足取り軽くデスクに戻った。
当然、他の女子社員の視線は感じておりますがなにか?
初めて得た、自己肯定感。もしかしたらこの上司、私を高みへと引っ張り上げてくれるかもしれない。それが嬉しかった。
(なんなんあれ? なんなん?)
繭香がうきうきしているのが、もう気に入らなかった。
香山心、30歳。おっさんじゃねーかって思ってたら、歳? なんです? 食べられるんですかそれ? みたいな感じで、歳を感じさせずに飄々としてるし、身体は鍛えているのだろうか、筋肉でがっしりしてるし、もちろんT大卒ってところもミソってわけで。
そして、まさしくコミュ力のバケモノだ。気難しすぎて一周回っちゃう、扱いずらい掃除のおばちゃんまでもう味方につけている。
「あんた! メジャーのオオタニさんだって、自ずからゴミを拾うんだからね? ほらそこ!」
っていつもゴミ拾いをさせられる、ツワモノなおばちゃんたちが、香山チーフを前にすると「あらやだ! あんたが持ってるとただのゴミが宝物みたいに輝いて見えるねえ。よこしな、おばちゃんが捨てといてやっから」となる。
(俺に劣らずハイスペだな)
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