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EP 9
「な! ちょっと八千穂! 今は私の企画の相談してるんだけど!」
「別にいいだろ。俺だって参加する権利があるんだからな」
「なによ、権利って」
「俺だって香山チーフの部下なんだから」
「はあ!? なに訳わかんないこと言ってんの」
「まあまあ、二人とも落ち着いて。各々時間を取るから、後でいい?」
香山チーフが両手をあげて、まあまあをする。
「そうよ、私が先に話していたんだから、もちろん八千穂は私の後なんだからね」
「なんだと」
「悪いけど、花崎さん。君が後でいい?」
「「え?」」
繭香がポカン。俺も一瞬動きを止めてしまった。
明らかに、繭香は不服そうな面持ちで、むっとしている。
そうか。わかったぞ。先に一対一で対決ってわけか。
「その決闘、受けて立つ!」
「「は?」」
しら〜っと無意味な時間が過ぎていった。
「それで? まあ原因は薄々わかってるけど……俺にライバル心燃やさないでよ」
「……別にそういう訳では」
「そういう訳でしょ」
「…………」
香山チーフは、俺の作った企画書を読みながら、話を続ける。
「さっきのあの態度からして、嫉妬してるんだろ? ってことは八千穂、お前は俺か花崎に恋をしているということになる」
どどん! とチーフのドヤ顔が無駄に眩しい。
「俺が香山チーフに恋してるなんて、可能性ゼロですよ。いやマイナス100パーです」
「そうか。多様性のこの時代、あり得るなと思ったんだが。ってことは〜〜?」
香山チーフの意地悪な顔、見て!
「そうですよ! 花崎に惚れてるんです! だから邪魔しないでくださいよ!」
好きだと認めると顔って火照るんだな。熱い。
「けど、お前らいっっっつもケンカみたくなってんじゃん」
「う。そうなんですけど……あれは花崎が無駄に俺を敵視してて……」
「嫌われてんじゃね?」
「そそそそんなことはないと思うああぁ」
「崩壊してんじゃん。自信ないんだー」
ん? なんで俺、香山チーフに恋愛相談してんの? このコミュ力モンスターめ!
「とにかく俺は応援しないし、援護射撃もしない。自分でなんとかしろ」
「わーってますよ!」
「仕事に私情を挟むなよ。はい、これ却下ね」
俺の企画書ー!
「……めっちゃ私情挟んでくるじゃないですか」
「だって面白いんだもん」
カチンときた俺は、あざーすと企画書を引っ掴み、シュレッダーに食わせた。
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