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それからは、静香の家で会うことが多くなった。
家だということからか、静香は外で会う時よりもさらにリラックスしているようだった。
ふたりでDVDを見たり、ゲームをしたり…
そんなごく普通のことが楽しく感じられる。
まさに、恋人同士のようだった。
だが、そうなる日は来ない…永遠に。
幸い、静香は精神的にもずいぶんと落ち着いて来た。
彼女から離れても良い頃合いだろうと思う。
なのに、俺はその一言がなかなか言えないでいる。
今日こそは言おう…!そう思っていても、静香の顔を見ると、つい言えなくなってしまうのだ。
だけど、今日こそは!
俺は、固い決意を胸に、静香の家を訪ねた。
「あ、いらっしゃい。」
「あれ?どうかしたのか?」
静香は、包帯を巻き、足を引きずっていた。
「うん…実はね、駅で誰かに突き飛ばされて、線路に落ちたの。」
「なんだって!?」
「本当に間一髪だったのよ。
でも、危うく難を逃れて捻挫で済んだの。」
「そうか、それは大変だったな。」
こんな時に、別れを切り出したり出来ない。
俺の決意は脆くも崩れ去った。
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