天使の誤算~悔恨の自尊心

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静香の甲高い悲鳴が上がったのと、鉄骨が落下した大きな音があたりに響いたのは同時だった。 「ショーン!」 「大丈夫だ。とにかくここを離れよう。」 静香は、余程怖かったのか、まっ青な顔をしていた。 「静香、大丈夫か?怪我はないか?」 俺は実体化し、ふたりで近くのカフェに入った。 「うん、平気。ショーンは大丈夫?」 「俺ならなんともない。」 会話はごく普通のものだが、静香の声は震えていた。 無理もない。あんな恐ろしい目に遭ったのだから。 「誰も怪我しなくて良かったよ。」 「本当だな。」 静香のコーヒーカップを持つ手はまだ震えていた。 「ショーン、あそこが私の家なの。」 静香が指差したのは、カフェから程近い所にある小さなマンションだった。 「……びっくりしないでね。」 「え?びっくりって?」 静香は微笑み、何も答えなかった。 カフェを出て、マンションの三階まで階段を上り、鍵を開け、入った部屋は、玄関からしてけっこう散らかっていた。 家具などのセンスもあまり良くない。 「だから、連れて来たくなかったんだ。 汚いでしょ?」 「いや、まぁ、こんなもんだろ。」 「ここ、座って。 でも、ショーン…どうしてここに?」 静香がソファーの上の雑誌をどかし、俺はそこに座った。 「うん、やっぱり一人では大変だろうと思って。 だから、こっそりつけていって、手伝おうって思ったんだ。 俺、ストーカーの素質あるだろ?」 「ショーンったら。」 軽口を言ったが、俺の本心は、まるで違っていた。 今回の件ではっきりとわかった。 静香は何者かに命を狙われている。 しかも、その相手は俺と同じ、天使だ。 俺は、今日、はっきりと見た。 奴の背中にある大きな翼を… (信じられない!天使が、人間の命を奪おうとするなんて… 一体、どういうことなんだ!?) 俺は動揺する心を懸命に押さえ込んだ。
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