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『三原静香』
マルセルが言った、ヴィクトルの最後の仕事は、三原静香を天界に連れて行くことだった。
だが、静香は生きている。
亡くなったのは、静香の妹の清香だ。
そして、その頃から、ヴィクトルの様子がおかしくなっている。
それらを考えれば、真相は自ずとわかってくる。
つまり、ヴィクトルは、間違えたのだ。
本来、死すべき静香ではなく、清香を天界へ連れて行ってしまったのだ。
しかし、腑に落ちないことがある。
死んだ者を天界に連れて行くことが、俺達、死の天使の仕事だ。
魂を肉体から切り離すのは、俺達ではなく、死神の仕事なのだ。
そう考えれば、間違えたのはヴィクトルではなく、死神ではないのか?
「マルセル…他に何か隠していることはないか?」
「えっ!?」
マルセルの顔色が変わった。
「ここまで話したんだ。
全部話せ。」
俺は再び、マルセルに威嚇するような視線を向けた。
マルセルは、おどおどとした様子で、俯いた。
「じ、実は…ヴィクトル様は、その……」
「どうした?早く話せ!」
言い淀むマルセルを、俺は急かした。
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