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しかし、奇妙なものだ。
静香の感じていた想いは、間違いではなかったのだ。
本来、死ぬべきは静香だった。
清香は、間違えられて死んでしまった。
そして、知るはずもないその事実を、静香はどこかで感じ取っていたのだ。
彼女に俺が見えたのは、もしかしたら、名簿では彼女は死んだ者だからかもしれない。
彼女の肉体は滅んではいないが、運命的には彼女は死んでいるのだから。
ヴィクトルのやったことは許されないことだが、同じ仲間として、出来ることなら告げ口だけはしたくない。
どうにかヴィクトルを説得し、改心させて、自らその罪を告白させてやりたい。
「マルセル、ヴィクトルは今どこにいる?」
「それは、僕にもわかりません。
あの日以来、ヴィクトル様とはお会いしてませんし、連絡もないのです。」
「おまえから連絡することは出来ないのか?」
「何度かしていたのですが、お返事はありません。」
俺は思わず舌を打ち、その場を後にした。
そうだ…無理に探さずとも、静香の傍にいれば、きっとヴィクトルに会えるはずだ。
奴は、この先も静香を狙うだろうから。
俺は、静香の元へ向かった。
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