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「もうっ!ショーンったら!」
静香は、お腹を抱えて笑い転げる。
あの日以来、俺は毎日静香と会った。
ただ会って、他愛ない話をするだけ…
なのに、回を重ねる度に俺は彼女に会うのが楽しみになっていた。
いつもなら、人間に関わるのはせいぜい数日だ。
それも、数日後には死に行く、今まで過酷な人生を過ごして来た者達だ。
亡くなる前に、ほんの少しでも良い思い出を作ってもらうために、俺は彼女らと数日間一緒に過ごすのだ。
静香は、いつもの人間達とは違う。
詳しいことは知らないが、そう苦しい人生を歩んで来たような人物には思えない。
ほとんど毎日、俺が聞き役だ。
最初は、いつも彼女の質問で始まるのだけれど、いつの間にか立場は逆転している。
俺には悩みなんてものはないから、話したい愚痴もない。
だから、そうなるのは当たり前と言えば、当たり前なのだけど。
彼女は、とても純粋な心の持ち主だ。
天界の者なら誰もが好きになる清い魂の持ち主だった。
彼女は、清い魂の持ち主だからこそ、妹のことで深い傷を負っている。
本来、負わなくても良い深い傷を。
少しずつ明るさを取り戻しているようには思えるが、まだ完全に立ち直ったとは言えない。
「なんで、私が死ななかったのかな…?」
「またそれを……
何度も言っただろ?
死期は神様が決めてるんだ。
双子だろうが、親子だろうが、代わりに死ぬことなんて絶対に出来ない。
短い人生だったけど、清香さんにはそれが寿命だったんだよ。」
「そう…なのかな。
おかしな話なんだけど、私…最近、自分が近々死んでしまうような予感があったんだ。
なのに、死んだのは私じゃなくて清香だった。」
「君達は双子だから、何か虫の知らせみたいなものがあったのかもしれないな。」
俺がそう言うと、静香は納得のいかないような顔つきで遠くをみつめた。
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