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「ねぇ、ショーン…彼女はいるの?」
おずおずとした口調で、静香が訊ねる。
「だから、失恋したばっかりだって言っただろ?」
「じゃあ…良かったら、私と付き合わない?」
「そうだな。静香のことは好きだけど…
特定の彼女を作ったら、世界中の女性が悲しむからな。」
「なに?それ、うまいこと断ってるつもりなの?」
「俺、こう見えてけっこう女々しい男なんだ。
だから、まだ失恋の痛手から立ち直れないから。」
彼女と付き合うのは簡単なことだ。
別れようと思ったら、彼女の前から姿を消せば良いだけなのだから。
だけど、そんなことはしたくなかった。
彼女を傷付けたくはないから、俺は曖昧なことを言って、彼女の願いを断った。
「……わかったよ。
でも、君が立ち直るまで待つのは勝手だよね?」
「あぁ、君が我慢強い性格ならね。」
「私、待つことには慣れてるから…
ねぇ、彼氏ではなくても、親しい友達だとは思っても良いよね?」
「あぁ、もちろんだ。
俺も、静香のことは大切な友達だと思ってる。」
「……ありがとう、ショーン。」
静香は、俺の胸に抱き着いた。
伝わって来る温もりは、いやな感触ではなかった。
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