第一章 1-1 熱中症

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 そう言えば、この前はバターを手作りしたっけ。  生クリームと塩を瓶に入れて、振り回す。振って、振って、どこまで振るんだってぐらい振ったら、水とバターが分離して完成。ちょっと振るのを手伝ったけど手は痛くなるし大変だった。 (まあ。美味しかったんだけど)  出来たバターはクラッカーに乗せて食べました。ご馳走様。 「こら未来。熱中症でダウンしてるんやろうが」 「もう、大丈夫。右狐と左狐のおかげで治った」 「免疫には発酵食品です」  あー。漬け物以外でお願いします。 「そんなすぐ、良うなるか。熱中症なめるなや」 「薬も飲んだし」 「だからて──ってどこに行くんや」  未来の目が泳ぐ。 「えへ」  彩兄の眉がつり上がった。 「言えへんのか」 「えへ」 「えへやない。悪化したらどうするんや」  未来は立ち上がり、支度をしだした。 「よし行くぞ」 「倒れても俺は運べんのやぞ。聞いてるのか。こら未来。未来ちゃん。おーい」  彩兄の言葉を無視して未来は部屋を出たのだった。  兎に角。しばらく退魔師の仕事が無いといいな。  その願いは、このあとの幽霊騒動で難なく砕けるのだった。
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