1-2 肝試し

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*** 「うわ。人、結構いる」  学校に着くなり未来は目を疑った。  人数集めと聞いていたが随分とざわついて人が多かった。 「てっきり旅行とかで、人が少ないのかと思ってたのに」  校庭のグランドには野球場があり、大きなライトが一角だけ眩しく照らされている。その下には40人ほどの生徒がいて、溶けかけのアイスを食べていたり、蒸し暑そうに扇子を振りながら友達と話していたり、暗がりで線香花火をしている馬鹿者たちがいた。  当たり前だが、花火をしている生徒は先生に叱られ、渋々と花火を片付けている。 (先生まで来てるし。よく学校が許したな)  それにしても、この様子だと未来が心配してたような、あやぶむ事態はなさそうだ。  このところ常国で、低級の妖魔ばかり相手してたから神経が過敏になっていたのかもしれない。肩に力が抜ける。  っと。ジジっと校庭を蛾がライトの光りで集り、忙しくびゅんびゅんと飛び回り、未来は「げっ」と顔をしかめ、ささっと避けた。はははっと笑い合う学生たちを見て、拍子抜けする。  彩兄が言った通り、ちょっと馬鹿げたものに参加しちゃったかな。 「あっ」  ひとりの青年が未来を見つけ心臓を弾ませた。未来は溜息をついていた。 「綾瀬さんはCチームね」  受付と書かれた学習机の上に書類を見つけ、未来は参加に丸を付けた。どこかうきうきとした実行委員は「颯太、綾瀬さん来たよ」っと大きく手を振って爽やかそうな青年を呼んだ。未来に気づいていた青年は、満面の笑みで駆けて来る。 「初めまして。あの俺。隣のクラスの風見颯太です」  颯太は急いで手を出した。条件反射で未来も微笑み、颯太の手をぎゅっと、小さな手で握りかえす。 「よろしくお願いします。綾瀬未来です」 「うん。知ってるよ」  ん? ああ。同じCチーム……だからかな。  颯太の顔がみるみる赤くなっていく。未来は首を傾げる。  赤面症なのかな。──っと。
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